「来年は引っ越したいのに、その方角がよくないらしい」「楽しみにしていた旅行先が凶方位だと知って、急に気が重くなった」――そんなふうに、方位の吉凶が気にかかって一歩を踏み出せず、このページにたどり着かれたのではないでしょうか。
進学、転職、結婚、新居の購入。人生の節目には、住む場所を変えたり遠くへ出かけたりする機会が必ず訪れます。そんな大切な決断を前にして、「方位が悪いと災いが起きるのではないか」という不安が頭をよぎると、せっかくの前向きな一歩が、どこか重たいものに変わってしまうものです。
当方のもとにも、「凶方位への引っ越しが決まってしまい、夜も落ち着かない」「方位を気にしすぎて、何も決められなくなった」というご相談が、季節を問わず寄せられます。そのお気持ちを、当方はまず静かに受け止めたいと思います。この記事では、方位除けとは何かをやさしくひもときながら、方位の不安とどう向き合えばよいのか、その心の整え方を、聖天様にお仕えする行者の視点を交えてお伝えしてまいります。
方位除けとは何か――その意味をやさしく解説
方位除け(方位除・方災除)とは、生年や年回りによって自分にとってよくない方角(凶方位)にあたるとき、そこから生じる災いを未然に祓い、心安らかに過ごせるようお願いする御祈祷のことです。
その背景にあるのが、古代中国から伝わった「九星気学(きゅうせいきがく)」という考え方です。九星気学では、生まれた年によって一白水星から九紫火星までの「本命星(ほんめいせい)」が定まり、その星が毎年めぐる位置によって、その年に避けたほうがよい方角があるとされます。方位からくる災いは「方災(ほうさい)」と呼ばれ、それが大きくなる前にお祓いをいただくのが方位除けの御祈祷です。
混同されやすいものに「厄年」がありますが、両者は別のものです。厄年が年齢を基準とした人生の節目の注意期であるのに対し、方位除けは方角(空間)と年回りに関わるもの。ですから、厄年にあたっていなくても方位除けの年回りにあたることもあれば、その逆もあります。
ここで、最初にいちばん大切なことをお伝えしておきます。方位除けは、決してあなたを脅かすためのものではありません。「凶方位に行ったら不幸になる」と恐れさせ、無理にお祓いへ追い込むようなものではないのです。本来は、不安をやわらげ、これから進む道を晴れやかな心で歩んでいくために、神仏のお力添えをいただく――そういう、前向きで温かい祈りのかたちなのです。
凶方位にはどんな種類があるのか――気にしすぎないための基礎知識
「凶方位」と一口に言っても、実はいくつもの種類があります。むやみに恐れないためにも、まずはその正体を知っておくと、心が落ち着きやすくなります。代表的なものを、やさしく整理しておきましょう。
万人に共通の凶方位
誰にとっても避けたほうがよいとされる方位があります。
ひとつは五黄殺(ごおうさつ)。五黄土星という強い力を持つ星がめぐる方位で、「すべてを土に還す」という働きから、長く尾を引く災いにつながりやすいとされます。
もうひとつが、五黄殺の真向かいにあたる暗剣殺(あんけんさつ)。暗闇から不意に斬りつけられるように、自分の落ち度とは関係のない突発的な出来事に見舞われやすい、と伝えられてきました。
さらに、十二支の真向かいにあたる**歳破(さいは)・月破(げっぱ)**もあります。「破」の字のとおり、積み重ねてきたものが崩れやすいとされる方位です。
個人の星によって変わる凶方位
人それぞれの本命星によって変わる凶方位もあります。自分の本命星がめぐる方位を**本命殺(ほんめいさつ)といい、主に身体に関わる不調が起こりやすいとされます。その真向かいが本命的殺(ほんめいてきさつ)で、こちらは気持ちが疲れやすい、精神面に関わる方位だと言われています。なお、小さなお子さんにのみ関わるとされる小児殺(しょうにさつ)**という方位もあります。
こうして並べると、ずいぶん多くの「避けるべき方位」があるように感じられて、かえって不安になる方もいらっしゃるかもしれません。けれど、ここで覚えておいていただきたいのは、これらはあくまで「気をつけるとよい」とされる目安であって、行けば必ず悪いことが起きると決まっているものではない、ということです。方位の知識は、不安に飲み込まれるためにあるのではなく、心構えを整え、丁寧に日々を過ごすためのもの。そう受け止めていただければと思います。

なぜ人は方位を気にしすぎて動けなくなるのか
方位を調べはじめると、「あちらも凶、こちらも凶」と、進む道が八方ふさがりに思えてくることがあります。引っ越したいのに踏み切れない、旅行の予定を立てたのに気が晴れない、家の増改築をためらってしまう――そうやって身動きが取れなくなってしまう方を、当方は何人も見てまいりました。
ここには、人の心の自然な働きがあります。先のことが見通せない不安があるとき、人は「何か確かなよりどころ」を求めます。方位という分かりやすいものさしは、そのよりどころになりやすいのです。けれど、よりどころのつもりだった知識が、いつしか自分を縛る鎖に変わってしまうことがあります。本来は前へ進むための道具が、進めないための言い訳になってしまう――これは、とても惜しいことです。
大切なのは、方位を「従うべき命令」ではなく「参考にする知恵」として受け取ることです。古来、方位の教えは、人が無謀に事を進めて身を損なわぬよう、立ち止まって慎重になるためのブレーキとして用いられてきました。ブレーキは安全に進むためのものであって、車を止めたままにするためのものではありません。気になることがあるなら、その不安を一人で抱え込まず、心得のある者に相談したうえで、納得して前へ進む。それがいちばん健やかな向き合い方だと、当方は考えております。
古来、人は方位の不安とどう向き合ってきたか――方違えの知恵
方位を気にする心は、決して今に始まったものではありません。日本では平安時代、陰陽道(おんみょうどう)に基づいて「方違え(かたたがえ)」という風習が広く行われていました。
これは、目的地が忌むべき方角にあたるとき、いったん別の方角の場所へ行って一晩を明かし、翌日そこから改めて目的地へ向かうことで、悪い方角を直接「犯さない」ようにする工夫です。たとえば西へ帰るのに西の方角がよくないとき、いったん南西の知人宅に泊まり、翌朝そこから戻れば、西へまっすぐ向かうことを避けられる、という具合です。『源氏物語』をはじめ、平安の物語にもしばしば登場する、当時の人々にとってごく身近な習わしでした。
ここに、昔の人の知恵が見てとれます。彼らは方位を恐れて家に閉じこもったのではなく、ひと工夫を加えることで、ちゃんと出かけ、ちゃんと前へ進んでいたのです。「悪いとされる方角があるなら、それを和らげる手立てを講じて、堂々と進む」――この姿勢こそ、方位との健やかな付き合い方の原点だと当方は思います。方位除けの御祈祷もまた、現代における、この前向きな知恵の延長線上にあるものなのです。

動く前に心がけたい、小さな実践
方位の不安をやわらげるために、今日から心がけられる、ささやかなことをお伝えします。難しい作法は要りません。
まずは、自分の進もうとしている道を、紙に書き出してみることです。いつ、どこへ、何のために動くのか。漠然とした不安は、頭の中でぐるぐると大きくなりがちですが、文字にして眺めると、案外、整理がつくものです。
次に、動くと決めたなら、その場所や道中で出会う人やご縁に、丁寧に感謝の心を向けること。新しい土地に移るなら、その土地の氏神様にご挨拶のお参りをする。旅に出るなら、無事を祈り、帰ってきたらお礼を申し上げる。こうした一つひとつの丁寧な振る舞いが、自分の心を整え、行く先での過ごし方そのものを穏やかなものにしてくれます。
そして、気がかりがどうしても消えないときは、一人で結論を出そうとしないこと。方位の知識は奥が深く、巷の情報だけで自己判断しようとすると、かえって不安が膨らむこともあります。そんなときは、心得のある者に話してみる。それだけで、肩の力がふっと抜けることが少なくありません。

方位除けの御祈祷と、聖天様のお力
方位除けの御祈祷は、多くの寺社で、年が明けてから節分(立春の前日)までの時期にお受けするのがよいとされています。一年の初めに方災を祓い、晴れやかな心で新しい年をスタートさせる、という考え方です。もちろん、引っ越しや旅行などの予定が決まったときに、その都度お願いするのもよいでしょう。
当方がお仕えする聖天様(大聖歓喜天)は、商売繁盛や良縁、夫婦和合から厄除開運まで、現世のあらゆる願いに応えてくださる、現世利益の最強の天尊です。方位や年回りからくる不安に対しても、その守護はまことに頼もしいものです。これは当方が勝手に申し上げているのではなく、古くから多くの行者や信仰者が現に体験し、書物にも記されてきた、確かなことです。
御祈祷というかたちで祈りを捧げることには、心を支える大きな力があります。不安に揺れていた気持ちが整い、「これで大丈夫」と前を向ける――その安心感こそが、新しい一歩を軽やかにしてくれます。当方では、皆様の願いを聖天様にお届けする御祈祷を行っております。方位の不安を抱えたまま動くのではなく、心の支えを得て、晴れやかに進んでいただきたいと願っております。
なお、聖天様の信仰には、丁寧に礼を尽くしてお祀りすることが何より大切とされる、繊細な一面があります。これは「粗相をすれば罰が当たる」という怖い話ではなく、誠を尽くしてお仕えするからこそ、その深い守護をいただける、ということ。だからこそ、作法を心得た行者に、心を込めてお願いする意味があるのです。
まとめ――方位の不安を、前へ進む力に変えて
方位除けとは、凶方位からくる災いを祓い、心安らかに進んでいくための、前向きな祈りのかたちです。九星気学にはさまざまな凶方位がありますが、それらは恐れて縮こまるためのものではなく、丁寧に日々を過ごすための目安にすぎません。平安の人々が「方違え」というひと工夫で堂々と出かけていったように、私たちもまた、不安を上手に手当てしながら、自分の進みたい道を歩んでいけるのです。
引っ越し、旅行、転職、新居――せっかくの新しい一歩を、不安に曇らせてしまうのはもったいないことです。方位のことで心が晴れないとき、どう向き合えばよいか迷うときは、どうか一人で抱え込まないでください。まずはお気軽にご相談ください。お話をうかがったうえで、必要であれば御祈祷や鑑定というかたちで、お力になれることもございます。祈りは、結果を縛るものではなく、向き合うあなたの心を支え、前を向く力となるものです。
あなたの新しい一歩が、晴れやかで穏やかなものになりますように。
合掌



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