迎え火・送り火のやり方とは?ご先祖様をお迎えする心と作法

夏の夕暮れ、玄関先で焙烙の上のおがらが燃える迎え火と、傍らに灯る盆提灯の穏やかな情景

「今年は自分がやることになったけれど、迎え火や送り火のやり方がよくわからない」「実家では当たり前にやっていたのに、いざ自分でとなると自信がない」「マンション暮らしで火を焚けない。それでもご先祖様を、きちんとお迎えしたい」――そんな思いを抱えて、このページにたどり着かれたのではないでしょうか。

お盆が近づくと、どこか気持ちがそわそわしてくるものです。とりわけ、身近な方を見送ってから初めて迎えるお盆であれば、なおのこと。「作法を間違えたら、失礼にあたるのではないか」と、かえって手が止まってしまう方も少なくありません。

けれど、どうかご安心ください。迎え火・送り火は、細かな決まりを完璧にこなすことよりも、ご先祖様を思う気持ちそのものが何より大切にされてきた、あたたかな行事です。この記事では、迎え火・送り火の意味と由来、時期や具体的な手順、そして火が焚けないときの心配りまで、やさしくお伝えしてまいります。

迎え火・送り火とは?その意味とご先祖様への思い

迎え火とは、お盆の始まりに、ご先祖様の魂が迷わず自宅へ帰ってこられるよう、目印として焚く火のことです。玄関先や庭先で火を灯し、「どうぞこちらへ」とお迎えの気持ちを表します。

反対に送り火は、お盆の終わりに、ご先祖様がふたたびあの世へまっすぐ戻っていかれるよう、お見送りとして焚く火です。「またいつでも帰ってきてください」という名残惜しさと、感謝の思いを込めて灯します。

つまり迎え火と送り火は、一年に一度、この世に帰ってこられるご先祖様を、玄関の灯りでお迎えし、お見送りする――その行き帰りを照らす、あたたかな道しるべなのです。

燃やす材料には「おがら」と呼ばれる、麻の茎の皮をむいて乾かしたものが使われます。麻は古くから、穢れを祓い清める清浄な植物とされてきました。その煙に乗ってご先祖様が帰ってこられるとも言い伝えられており、火を焚くという素朴な行いの一つひとつに、清らかな祈りの心が宿っているのです。

お盆の由来|「盂蘭盆会」と目連尊者の物語

迎え火・送り火の背景にあるお盆という行事は、正式には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」といいます。その由来は、仏教の『盂蘭盆経』に説かれる、目連尊者(もくれんそんじゃ)の物語にさかのぼるとされています。

お釈迦様のお弟子の中でも、すぐれた神通力を持つとされた目連尊者は、あるとき亡き母の姿を探しました。すると母は、餓鬼道という苦しみの世界に落ち、飢えに苦しんでいたのです。悲しんだ目連尊者が食べ物を差し出しても、それは口に入る前に燃え上がってしまい、母を救うことができません。

思い悩んだ尊者がお釈迦様に教えを乞うと、「夏の修行が明ける旧暦七月十五日に、多くの僧たちに供養をしなさい」と諭されました。その通りにしたところ、母は餓鬼道の苦しみから救われた――この故事が、ご先祖様を供養する行事としてのお盆の起源になったと伝えられています。

亡き人を思い、その安らかであることを願う。お盆とは、はるか昔から続いてきた、人の情の深さそのものを形にした行事なのだと、当方は感じております。

一人で気持ちを抱え込みすぎず、どなたかに話を聞いてもらいたいときは、いつでもお気軽にお声がけください。

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迎え火・送り火はいつ行う?2026年の日程と時間帯

迎え火はお盆の初日(迎え盆)に、送り火はお盆の最終日(送り盆)に行うのが基本です。ただしお盆の時期は地域によって異なりますので、まずはご自身の地域の日程をご確認ください。

一般的な日程(月遅れ盆・8月)と7月盆

全国的にもっとも多いのは、8月13日から16日にかけての「月遅れ盆」です。この場合、迎え火は8月13日、送り火は8月16日に焚きます。2026年(令和8年)でいえば、迎え火は8月13日(木)、送り火は8月16日(日)にあたります。

一方、東京や神奈川・静岡の一部など、7月にお盆を行う地域(7月盆)もあります。この場合は、迎え火が7月13日、送り火が7月16日となります。沖縄など旧暦でお盆を営む地域では、毎年日付が変わります。

なお、地域によっては12日に迎え火を焚いたり、15日の夕方に送り火をしたりと、慣習に細かな違いがあります。判断に迷うときは、菩提寺やご親族に一度うかがっておくと安心です。

何時ごろに焚くとよい?

時間帯に厳密な決まりはありませんが、迎え火・送り火ともに、夕方の薄暗くなってきたころから日没前、おおよそ17時から19時ごろに焚かれることが多いようです。日中は明るくて火が見えにくく、逆に真っ暗になると足元が危ないため、この時間帯が目印としてもちょうどよいのですね。

送り火については、最終日の午前中はまだご先祖様がこちらにいらっしゃるとされるため、夕方以降にお見送りするのが望ましいとされています。もっとも、ご家庭の事情で夕方に行えないときは、時間を早めていただいて構いません。大切なのは時刻の正確さよりも、心を込めてお迎えし、お送りするその気持ちです。

迎え火・送り火の具体的なやり方と必要な道具

ここでは、自宅で火を焚く場合の基本的な手順をご紹介します。難しく考えず、一つずつ進めていけば大丈夫です。

用意するもの

必要なものは、おがら(麻の茎。手に入らなければ割り箸でも代用できます)、焙烙(ほうろく)と呼ばれる素焼きの平皿(耐熱皿でも代用可能)、火をつけやすくするための新聞紙など、点火用のマッチやライター、そして消火用の水です。おがらや焙烙は、スーパーやホームセンター、生花店、仏具店などで手に入ります。

火のつけ方と手順

まず玄関先や庭先で、焙烙の上におがらを積み重ねます。おがらが長い場合は折って構いません。井桁(井の字)や山の形に交互に組むと、すき間に空気が通って火がつきやすくなります。火がつきにくいときは、下に新聞紙を敷くとよいでしょう。

火が灯ったら、ご先祖様へ感謝の気持ちを込めて静かに手を合わせます。あわてる必要はありません。ゆらめく炎を見つめながら、「今年も帰ってきてくださって、ありがとうございます」と心の中で語りかける、その時間こそが供養なのです。

おがらが燃え尽きたら、必ず水をかけて完全に消火します。しばらく水に浸しておくと安心です。灰は冷めてから可燃ごみとして処分して構いません。送り火も、同じ手順で行います。

風の強い日や、周りに燃えやすいものがあるときは、火事にくれぐれもご注意ください。ご先祖様も、無理をして怪我をすることは決して望まれないはずです。

お墓から火を持ち帰る風習の地域では

地域によっては、お墓やお寺で灯した火を提灯に移して自宅まで持ち帰り、その火で迎え火を焚くという古い風習が残っています。ご先祖様をお墓から家までお連れする、道案内の意味が込められた、味わい深い作法です。お墓が遠方の場合は、一度火を消して電池式の灯りで代用しても差し支えありません。

思うようにお参りができず心残りがあるときも、そのお気持ちごと、どうぞ一人で抱え込まないでください。

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マンションで火が焚けないときは?3つの代替方法

近年は住宅事情から、火を焚くのが難しいという方も増えています。マンションやアパートでは、まず管理規約でベランダ等での火気使用が認められているかを必ずご確認ください。禁じられている場合でも、心配はいりません。ご先祖様をお迎えする気持ちは、火の大小では測れないものだからです。

一つ目は、盆提灯を灯す方法です。盆提灯には、ご先祖様をおもてなしする意味と、自宅を示す目印としての役割があります。電気式・電池式の盆提灯を室内に灯せば、迎え火・送り火の代わりとして立派に役目を果たしてくれます。

二つ目は、おがらの形をした「迎え火・送り火ローソク」を使う方法です。陶器の器に乗ったろうそくに火を灯すもので、室内やお仏壇の前でも手軽に、安全に灯せます。天気の悪い日にも使えて安心です。

三つ目は、形だけ整える方法です。おがらと焙烙を用意し、火はつけずに飾っておくというもの。「そんな簡単でよいのだろうか」と思われるかもしれませんが、大切なのはお迎えする心であって、形式ではありません。手を合わせるその気持ちがあれば、それで十分に供養になるのです。

地域と宗派による違い|浄土真宗の考え方など

迎え火・送り火は、地域や宗派によって捉え方が異なります。この点を知っておくと、ご自身の家の作法に迷いがなくなります。

宗派についていえば、浄土真宗では基本的に迎え火・送り火を行いません。これは、亡くなった方はすぐに極楽浄土へ往生されると考えるため、お盆に現世へ帰ってこられるという前提を取らないからです。決して供養を軽んじているのではなく、教えの捉え方が異なるということですね。一方、浄土宗・曹洞宗・真言宗・天台宗・日蓮宗・臨済宗などでは、迎え火・送り火を行う風習があります。

地域ごとの違いも豊かです。神奈川の一部では、おがらの代わりに砂を盛った器に線香を立てる「砂盛り」を行い、東海地方の一部ではたいまつを焚きます。沖縄には、独自のお線香や作法による、その土地ならではのお盆文化があります。

さらに、京都の「五山の送り火」、各地の「精霊流し」「灯籠流し」なども、もとは送り火から発展した行事です。夏の夜空を彩る打ち上げ花火さえ、その起源はご先祖供養の送り火にあるとも言われています。私たちの身近な夏の風景の多くが、実は亡き人を思う祈りから生まれてきたのだと知ると、この季節の見え方が少し変わってくるのではないでしょうか。

迎え火・送り火を通して、今日からできる心の持ち方

迎え火・送り火は、単なる年中行事ではありません。日々の暮らしに追われる中で、ふと立ち止まり、自分がどこから来たのかを思い出させてくれる、静かな時間でもあります。

今年の夏、火を焚くにせよ、提灯を灯すにせよ、ほんの少しだけ手を止めて、亡き方の顔を思い浮かべてみてください。「ありがとうございました」「見守っていてください」――言葉は素朴なもので構いません。手を合わせるその数分間が、慌ただしい心をやわらかくほどき、明日への支えになってくれます。

もし「作法が完璧でないから申し訳ない」と気に病んでおられるなら、どうかその心配は手放してください。やり忘れたからといって罰が当たるようなことはありませんし、気づいたときに手を合わせれば、その思いは必ず届きます。ご先祖様が望まれているのは、完璧な儀式ではなく、あなたが元気に、穏やかに日々を過ごすことに他ならないのですから。

まとめ|大切なのは、思う心

迎え火はご先祖様をお迎えする目印、送り火はお見送りの灯り。おおよそ8月13日から16日(地域により7月13日から16日)に、夕方ごろ焚くのが一般的で、火が焚けないときは盆提灯や代用ろうそく、あるいは形だけでも構いません。宗派や地域によって作法はさまざまですが、そのどれもが、亡き人を思う心から生まれてきたものです。

お盆という季節は、大切な方を亡くした悲しみが、ふと胸によみがえる時季でもあります。誰かを見送った寂しさ、供養がこれでよいのかという迷い、あるいは言葉にできない心細さ――そうした思いを、一人で抱え込む必要はありません。どう向き合えばよいか迷うときは、まずお気軽にご相談ください。お話をうかがったうえで、必要であればお力になれることもございます。

亡き方とのご縁は、姿が見えなくなっても、決して切れてしまうものではありません。この夏、灯した一つの火が、あなたとご先祖様のあたたかなつながりを、そっと照らしてくれますように。

合掌

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